過去の栄光

高校2年生のときに2つ年上の彼がいた。
小学生の頃からサッカーを始めて、地元のプロサッカーチームのユースだったらしい。
中学高校とサッカー漬けの毎日。

高校3年生の春、腰を痛めてしまった。
腰の骨がバキッという音を感じたとき、プロへの道を絶たれた瞬間だったそうだ。
大学はサッカー推薦もなく、進められるがままに地元の大きな大学に入学。

ほどなくして、学校がつまらないので退学し、フリーターに。
そんなとき、アルバイト先にいた私と付き合いを始めた。
一緒にいてもサッカーの話が7割以上。

とにかく「武勇伝」の嵐だ。
自分が高校1年のときに高校サッカー選手権大会で良い所まで進んだのは、ルーキーの自分がいたからだ、とか、最後の年の県大会の話など。
過去の話を聞くたびに反応に困った。

私はそれからサッカー日本代表の試合やJリーグの試合について、スポーツニュースで観るのが嫌になった。
ここに出ている人に「なれなかった」スポーツマン達が、全国に何百万人、いやそれ以上いて、多くは競技に関係ない人生を歩んでいる。
そして、彼のように過去の栄光が忘れられず、「自分はこんなもんじゃない」と言いながらフリーターをしている人もたくさんいるだろう。

有名なスポーツメーカーへの就職を私はたびたび進めた。
スパイクや練習のウエアについて、誰よりも知っているんじゃない?だったら開発部を目指したら?そんなことを高校生だった私はしきりに話していた。

なかなか募集されない求人なのに、「俺はそんな所におさまる男じゃない」という謎の自信。
口だけの彼が嫌気が差し、ついには「もうサッカーできないんだから」と言ってしまい、たいそう悲しませた。
現実はサッカーどころか、普通の仕事にも影響が出るほどの腰の痛みを抱えていた。

リハビリに通うこともなく、「俺はまだまだ」という背中が悲しくて、一年経ったころにお別れをした。
今でも夢を叶えられない大勢のスポーツマンがいて、一握りの、数人のスターたちが活躍していることを考えてしまうと、涙が出そうになる。

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