自転車のベル

このあいだ、東京の下町と言われる場所をゆっくりと散歩していて発見があった。
入り組んだ路地で、家と家の隙間もほとんどない、そんな土地だった。
昼食を終えた私はふらふらと目的地に向かっていた。

チリンチリン、自転車のベルが鳴った。
自転車の姿は見えないが、自分の曲がろうとしている道から音がするのはわかった。
数秒後、ママチャリに乗った主婦が現れた。

ベルが鳴ったから、衝突はあり得ないし、お互いに道をふさぐようなことにもならなかった。
ああ、自転車のベルってこうやって使うのかと何だか感慨深かった。
勘違いかもしれないが、東京の歴史も感じてしまった。

私は地方出身で、子供の頃から比較的新しい街に住んでいた。
道路の幅も広く、土地があまっているようなところだ。
路地裏、なんてものにはほとんど出くわさないし、街の歴史というのも感じられない。
住む人達の文化もこれから出来ていくのだろう。

しかし、東京には歴史があり、何代も住んできた人達の暮らしの文化がある。
そんなことを思ったのだ。

歩道などを走行中に、歩行者に危険を知らせるために自転車のベルを鳴らす行為にたまに出くわすが、あれは本来「よくない」ものらしい。
詳しくは知らないが、交通ルールとしてそう決まっているそうだ。

しかし、今回の曲がり角で誰かに存在を知らせるというベルの使い方はすごく上手だなと思ったのだ。
家が密集している土地に住み、長く暮らしてきた人達の知恵。
大げさかもしれないが、私にとっては新鮮で、気分がすっとするような嬉しい出来事だった。

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